語りの既知感、その型を見る
投稿の既知感
SNSやニュースフィードを見ていると、
投稿に既知感を覚えることがあります。
見るたびに思い出すのは、
漫画を描いていた頃に読んだ、
シナリオ技法の本。
なぜ、その型が選ばれたのだろう、
既知感が、聞き手に安心感を与えるのだろうか、
では、その安心感とはなんだろう。
このような疑問から、
SNSやニュースフィードでよく見る、
語りの型を見ていくことにしました。
語りの型
語りには、いくつかの典型的な型があります。
ここでは、5つの型を見ていきます。
救世主型
AIに仕事を奪われる(不安)
↓
戦略・武器が必要(危機)
↓
今なら簡単スキルアップ(解決)
構成:不安の提示、危機の強調、解決策への誘導
放浪者型
独りでさみしい(自己)
↓
出会いがない(世界)
↓
素敵な出会いがほしい(希求)
構成:自分の感情を提示、世界への不満、自由や救済の希求
代弁者型
彼らは嘘つきだ(敵)
↓
あなたは騙されている(味方)
↓
目覚めよう(連帯)
構成:敵の設定、聞き手の被害者化、語り手の味方化
詩人型
貧しさに負けた(過去)
↓
世間に負けた(社会)
↓
ダメな自分が哀れ(感情)
構成:過去の傷、社会との関係、そこに残る感情
伝道師型(善悪・中心周縁の構造)
世界は堕落している(悪)
↓
ぼくらは試されている(主従)
↓
正しさがすべてだ(善)
構成:世界の構造を提示、善悪・主従の二分、世界観の方向付け
このように、いくつかの型で、
SNSやニュースフィードの投稿を見ると、
多くの語りが型にはめられたものに見えてきます。
型を増幅するAI
語りの型は、古典がつくほど昔からあるものです。
それが、よく見る投稿と感じられる背景には、
AIによって型がこれまで以上に強く、速く、広く
流布するようになっていることがあります。
AIには、
- 反応されやすい語りをアルゴリズムで優先する
- よく使われる型を学習して再生産する
このような特性があります。
この特性により、AIは
反応されやすい語りを優先し、
よく使われる型を強化しながら、情報を伝播します。
これによって、
- 情報の流通速度が上がり、型が固定化しやすくなる
- 語りの前提が見えにくくなる
- 語り手と受け手の距離が縮まり、影響が直接的になる
こうした語りの型の勢いが、強くなっていきます。
型を知って距離をとる
型が強くなるほど、語りの勢いが強くなり、
語りの前提ごと、受け取られる傾向も強くなっていきます。
このとき、語りの勢いをかわす視点として、
語りの型を知ることが役立ちます。
どのような感情や前提からはじまり、
どのような方向へ導かれ、
どのような安心感が働いているのか
このような視点を持つことで、
勢いのある語りの中でも、
自分の判断を保ちやすくなります。
次の章では、「感情」の構造を見ていきます。